ナカノ実験室

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私本太平記/感想・書評&あらすじ・鎌倉幕府を倒した立役者として書かれている足利尊氏(高氏)ですが…ネタバレ注意。


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寄稿を頂きました。

私本太平記

今でこそ歴史の教科書で、中世南北朝時代の英雄、鎌倉幕府を倒した立役者として書かれている足利尊氏(高氏)ですが、戦前では触れることもタブーだった逆賊だったということをご存知の方は少ないと思います。私本太平記は、その時代を生きた吉川英治氏が書いた大作です。

建武の中興での大功績、天皇に忠義を尽くした大楠公、楠正成とは真逆の立場にいた尊氏の真実を描いたことにより、現在の定説が確立されたと言っても過言ではないでしょう。
皇室が二つに割れたという前代未聞の、時代の大転換期の中で葛藤し、悩み決断する尊氏の姿には読んでいると、自分までが悩ましく苦しい思いに陥ってしまうほどその世界に引き込まれていきます。
また、滅ぶべくして滅亡の道を辿った幕府側にも様々な紆余曲折があり、単に善悪で片付けられない、複雑でありながら、人間であるが故の様々な事情がしっかりと描かれています。
肉親、縁戚、それらが大志のために争い、大義を成そうとする。人が何かを背負った時の意志と心身の強靭さ、さらにその後に訪れる虚無感。まさに大河ドラマです。
この時代が、その後現在に至るまでの礎であったことがよくわかる作品です。湊川の戦いのシーンは、現代の宮仕えにも通ずる楠正成の苦悩が伺え、他人事ではないその心情にジンとしました。
未来へ残したい一冊です。