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感想&あらすじ:巷説百物語(こうせつひゃくものがたり)読者はあくまで傍観者の目線で読み進めるのが特徴…ネタバレ注意。


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巷説百物語(こうせつひゃくものがたり) 著:京極夏彦

平成11年に発行された作品で、これまでに関連作が七作。「百物語シリーズ」とも言われる。
本作では様々な事件が起こるが、読者はあくまで傍観者の目線で読み進めるのが特徴だ。毎回何かしらの妖怪になぞらえて事件が起こり、誰かが死ぬ。
舞台は江戸時代。科学の及ばない域の事象や、不思議なことが「妖怪」として存在した時代である。関係者もごく自然と事件を妖怪の仕業と受け止める。

だが、その裏で、小悪党達が金で請け負った復讐殺人を行っている、というのが真実だ。
初めて読んだ第一印象は、「妖怪仕立ての必殺仕事人」だった。
だが、読み進めて行くと、各登場人物にも何かしらの過去に問題が有ったと知れてくる。
特にこの刊での最終話の書き下ろしの話は、非常に重要だ。
この作品の刊行される二年前に発表された、「嗤う伊右衛門」にも共通の人物が登場する。「小股潜りの又市」という小悪党だ。この男は本作の中では常に飄々としていて、用意周到に事件を作り上げていく仕掛け人だ。
だが、前日譚にあたる「嗤う伊右衛門」では、もっと人間味のある様子を見せている。
書き下ろし最終話では、暗にこの「嗤う伊右衛門」での経験を示している。おそらく又市にとっては苦しいやりきれない過去だ。
だが、読者は何故そんな様子を突然見せるのか分からない。そこで動揺して、「知りたい」と思ってしまった時が、作者の術中にかかったということだろう。次作もそして関連作である「嗤う伊右衛門」も読んでしまい、首までどっぷり濃厚な世界に浸かってしまう。
何より、物語を読み進めると、どんどん登場人物達の内面や過去が知れてくる、という中毒性を持つ本である。