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感想・書評:十二国記シリーズ(小野不由美)あらすじ・各国に一頭,神獣・麒麟がいて,天命を聞き民の中から王を…ネタバレ注意。


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寄稿頂きました。

十二国記シリーズ(小野不由美)

 古代中国に似た架空の世界.そこには十二の国がある.各国に一頭,神獣・麒麟がいて,天命を聞き民の中から王を選ぶ.王は神となって政を敷くが,国傾き王が天命を失った時,麒麟は失道の病に倒れ,王もまた追われる.そんな世界のお話.
 本作については,すでに多くの人々が思い思いのことを書いている.そこで全体的な感想は他に譲り,ここシリーズを見渡して特によくできていると思った点を指摘したい.

 それは,王になる資質や条件の類を描かなかったことである.本作において,そのようなものは(目に見える範囲では)ない.麒麟はただ「王気」と呼ばれる気配?のようなものを頼りに,その者が王たるべき人物であると「感じる」.その者の出自,能力,人望,一切関係なしである.必ずしも適任者が選ばれるとは限らない.中には王の務めの重みに耐えかねて引きこもる者もいるし,麒麟自身「なぜこの者が王なのだ…」と思いつつ仕えていたらしい記述も一部にみられるほどだ.このように,王は必ずしも英雄でも天才でもない.
 責任ある地位に然るべき人物がいない.重い職責に耐えうる人物が見いだされない.まるで,現実社会そっくりだ.力量のある者とない者,向いている者といない者,社会の縮図がそのまま持ち込まれている.これこそ,世の理,天命ということか?あまりに異質な原理原則で回る,数学のような十二国の世界に,人の世らしさを付け加えているように思う.選ばれた理由があるようなないような,そんな曖昧なところもそっくりだ.