寄稿頂きました。
祈りの虚月(高里椎奈)ー胸に響くひとことー
著者初の学園物は、ミッション系女子高が舞台!学園伝統の謎解き・おまじないで願いをかなえるため、夜中の校舎に忍び込んだ5人の生徒。とりあえず夜の学校は怖いから、それに5人寄れば文殊の知恵、てなわけで協力して謎解きを始めたのはいいけれど…。やたら血なまぐさい手掛かりの数々、迫り来る警備員の魔の手(笑)、でも最大の問題は---ほんとは4人しかいなかったはずだってこと!?と、ホラー風味でお話は進んでゆきます.ところが,次第にそれぞれの思惑が露わになり…。高校生ならではの悩み、揺れる心が、繊細なタッチで描かれます。
その最高潮が、
「他人を羨ましく思うのなんて当然じゃない。それでも喜びたいと思って、嫉妬を隠して、笑顔であろうと努力する人は、清廉であろうとする志が才能だわ」
というセリフ。「人を素直に祝福できるのは天性の素質」という意見への反論ですが、大人びた「そうするのが当然」ではなく、その「志が才能」とする見方が、みずみずしいというか、青いというか(まあ、若干高校生離れしてると言えなくもないけど)。
誰もがヒーロー、ヒロインになれるわけじゃない。輝く隣人のそばでは、一層闇が深く感じられる。どうして、私じゃないんだろう…。でも、人の上に立つことだけに価値があるんじゃない。きらびやかな才能だけに価値があるんじゃない。そのことを、ありがちな「自分らしさ」とは違った角度から教えてくれました。そして、私も、たとえ1番にはなれなくても「清廉であろうとする志」だけは忘れずにいようと思ったのでした。
…まあそれでも、できるならきらびやかな才能に恵まれたかったのは事実ですが(笑)。