ナカノ実験室

ナカノ実験室が行う実験的なブログです。

スポンサーリンク

感想・書評:不毛地帯・山崎豊子/あらすじ・日本人が忘れてはならないシベリア抑留の真実…ネタバレ注意。


【おすすめ情報】知らない人は損している!「アマゾン業務用ストア」で便利でお安く。

寄稿頂きました。

不毛地帯・山崎豊子 日本人が忘れてはならないシベリア抑留の真実

どうしたらここまで緻密な取材が出来るのだろう・・・山崎豊子さんの小説を読むたび思うことです。ほとんどが事実に基づき、実在した人物をモチーフししていることから、リアリティー溢れるストーリーは緊張感に満ち満ちていて、鬼気迫るものすら感じます。
不毛地帯は、日本の近現代史の発展と、その裏にある暗の部分を描き切った秀作です。

主人公の壹岐正(いきただし)は、旧帝国陸軍の大本営参謀。陸軍幼年学校から陸士、陸大という、軍人にとって最高のエリート街道を歩んできた軍人でした。日本の敗戦を機に、日ソ中立条約を一方的に破棄し、日本に宣戦布告をしてきたソ連によってシベリアに抑留されることとなります。
ソ連の参戦、シベリア抑留。これらは近代戦史におけるもっとも卑劣で理不尽な史実であると私は思うのですが、このシベリア抑留が、我が日本人にとっていかに悲惨なものだったかも、この「不毛地帯」ではしっかりと描かれています。
シベリアから生還した壹岐正は、家族の意向もあり、自衛隊への就職は避け、民間企業の商社で第二の人生を歩むこととなります。しかし、幼いころから軍隊での生活しか知らない壹岐にとって、資本主義という論理は違和感たっぷりのものでした。それでも過酷な状況下を生き抜いた壹岐は、元大本営参謀という立場で培った戦略を駆使、社の中核へと登っていきます。
敗戦国の我が国を、再び世界の舞台へと押し上げた、戦後の高度経済成長期での日本人のエネルギーやバイタリティー。それらが凄まじいまでの描写力で書かれています。
今の日本の礎となった戦後期。日本人が忘れてはならない様々を知ることができる小説です。