一言感想
苦い、苦すぎます。大人の恋愛でありがちな、苦さだけをぎゅっと集めたような作品です。とっても甘ったるくてふわふわの作品名で表紙だってあんなに優しい色なのに...
面白いところ。
甘さが少しもないです。たまにふと落ち着くようなシーンがありますが、もともとこんがらがっていたものがほどけてもとに戻っただけでだれも前に進みません。この作品のラストから、やっと主人公たちが前に進みだします。そのラストがとても素敵です。
好きなところ。
こういう恋愛については経験値を増やしていくものだと思うので体験するしかないように思います。主人公は全部で4人いてそれぞれが全力で生きています。そしてぶつかった分だけ打ちのめされて、そして新しい道を見つけます。それぞれにあった人生を見ることができるので好きです。
好きなキャラ。
ちひろというキャラ以外の3人が好きなのですが、なかでもフリーターの里子が好きです。恋に飢えた彼女の日常は何一つ彩りがなく恋がしたい恋がしたいと嘆きます。この作品を初めて読み、当時高校生だった私は里子と同じ気持ちになりました。彼女と当時の私が欲しかったものすべて手に入れた今、読み返すとなんだかくすぐったい気持ちになるので里子が一番好きです。
好きなエピソード。
風俗で働く秋代が、体を傷つけられ飼っていた魚も死んでぼろぼろになる話です。ずっとずっと、彼女が幸せになるようにと祈ってしまいます。どうしてそんなに傷を負うの?と苦しくなりますが秋代の話のラストで少し救われるところでふっと安心するので好きです。
おすすめ。
キリコさんの作品はどれも心が揺さぶられます。ほろ苦いなかにそれでも甘いお話があってやみつきになります。基本的に短編が多くて読みやすいですが、あまりに痛々しくて少し辛くなってしまうことがあるので注意です。
作品に関する思い出。
古本屋でかわいい背表紙だったので購入しました。分厚くてたっぷり読めるし面白かったです。「ストロベリーショートケイクス」という題名で映画化されていてそちらと比べてみるのも面白いです。
作者に関して。
この作者のことを調べてみて初めて知ったのですが、映画に塔子という痩せた美人のイラストレーターが出てくるのですがその女優がキリコさんでした。結構な年齢だと勝手に思っていたのでものすごい美人なのには本当に驚きました。
その他。
映画に関してですが、主な女優さんたちがそれぞれの役にぴったりで驚きます。観ると心が痛くなってしまうのにまた観てしまう中毒性があるのでぜひ映画もみて欲しいです。