「桜ほうさら」上巻 宮部みゆき・著
宮部みゆきの時代小説です。濡れ衣を着せられて、亡くなった父の汚名を晴らすために、江戸に出てきた武家の次男坊の物語です。
武道は苦手、どちらかといえば学問と書道のほうが得意な主人公ですので、写本の仕事を引き受けることになります。
ヒロインとなる不思議な雰囲気の少女を桜の木の下で見かけました。桜がこの物語での重要なポイントでもあります。
題名の「桜ほうさら」とは「ささらほうさら」という言葉(あれこれいろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ)という言葉から、ちょっとひねって名付けたとのことです。
主人公の若侍は、とても心優しいので、そのためにいろいろ苦労をすることにもなります。すんでいる長屋では、人々が何かと手を差し伸べてくれて、生活を支えてくれています。
江戸時代の長屋の暮らしが生き生きと描かれており、目の前に見えるような、実際に長屋に暮らしているような気持ちになります。人々の温かさが心にしみる物語です。
父の死の真相が明らかになる下巻まで、すぐに読み終わってしまいました。楽しめる作品です。