「初恋の湯殺人事件」 吉村達也・著
吉村達也の、温泉殺人事件シリーズの中の1作です。今回の事件は、島崎藤村ゆかりの小諸の温泉です。
島崎藤村の有名な詩「まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき・・」が、重要なキーワードとして使われています。
リンゴを浮かべた風呂での殺人事件が起きます。犯人はだれか?・・4人に絞られてきますが、誰が殺したのか?が、簡単にはわからない・・
双子の少女が重要な登場人物ですが、思春期特有の気持ちの在り方に、本人もまわりも振り回されてしまいます。
かじりかけで道に落ちていたリンゴ。湯船に浮かんでいるリンゴ。そして島崎藤村の詩。そのいずれもが問題を解くキーワードです。
わかりそうでわからない・・なぜ?どうして?が、たくさん浮かびます。
ちょっと中味に触れますが・・殺人現場へ行ったのは、殺人者だけではなかった・・殺したと思った人は、じつは殺しておらず・・あとから現場に行った人が真の犯人になってしまうという、わりに古典的な物語の構成です。