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感想・書評『教養主義の没落:竹内洋』ネタバレ注意「高等教育が広がると教養=エリートの構図が崩れるという指摘」(レビュー)。 #読書


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『教養主義の没落』(竹内洋):教養は何かを考える前に教養主義を知ろう

最近、「教養を持つことが大事」「教養は人生を支える力になる」という言葉をよく聞きます。とは言っても、教養がどのように人生に役立つのかはイマイチ分からないものです。『教養主義の没落』は教養を重視した教養主義の歴史的変遷を辿り、当初は一部のエリートしか享受できなかった教養に基づく教養主義が、高等教育の拡大によって、大衆的教養主義になって終焉したことを解き明かしています。

高等教育が極めて限定的だった時代に教養に触れられる人はエリートと同義だったものの、高等教育が広がると教養=エリートの構図が崩れるという指摘は素人にも理解しやすいと思いまし、大卒がエリートではなく、サラリーマンになるための学歴となったことが教養主義の終わりを導いたとする意見には多くの人がうなづくのではないでしょうか?また、岩波書店がアカデミアと大衆を繋いだことで、結果的に教養主義の終わりを早めた側面も指摘されています。『教養主義の没落』で見る教養主義の変遷は、教養の立ち位置が時代や社会情勢によって、簡単に変容してしまうことを示しています。しかし、教養主義は終わったとしても、教養の重要性を説く人々は減っていません。今、私たちに求められる教養は何なのか、少なくとも教養=エリートという意味の教養ではないでしょう。新しい教養を自分で考えるために、『教養主義の没落』で教養主義の変遷を知っておくことは意味のあることだと思います。