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感想・書評『イギリス観察辞典:林望』ネタバレ注意「ユーモア溢れるエッセイ集」(レビュー)。 #読書


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『イギリス観察辞典』林望、イギリスに誘われるユーモア溢れるエッセイ集


『イギリス観察辞典』は、日本書誌学及び近世国文学を専門とする作家、林望のイギリスに関するエッセイ集です。少し堅いものから流行りのものまで、89のテーマでユーモアたっぷりにイギリスを紹介しています。これらのエッセイが、日本人のイギリス観を壊したり、やっぱりそうかと思わせたりでなかなか面白いのです。
例えば料理。イギリス料理は不味いというのは、よく言われることですが、筆者も異論を唱えていません。しかし「ナマクラ」なのはプロの料理人の腕で、イギリスの家庭料理は他の国と同等のレベルだと同時に主張し、中でも家庭で作るティータイムのお菓子は世界一だと宣言します。外国のお菓子についても、日本人はあまり良い印象を持っていない風潮がありますし、実際に口に合わないものも多いですが、イギリスはお菓子を家庭で作る麗しき伝統があり、イギリスのような家庭における伝統は日本では失われつつあるものだと、日本文化への眼差しも忘れません。
他のエッセイでは、イギリスの音楽が取り上げられます。イギリスの音楽というとビートルズなどロックやピストルズやクラッシュのパンクが有名ですが、そういったポピュラー音楽の源泉がロンドンの街に根付いていることは意外と知られていません。
筆者は図書館の司書の青年が異常にハープシコードが上手で、実は働きながら音楽を志していることを知ります。そういったプロを目指すアマチュア達が、こぞってロンドンの音楽ホールを目指して日夜練習に励んでいるのです。イギリスには劇場文化が根付いており、音楽に限らず芝居などでも使用され、世界の一流どころが安い値段で出演します。それを聴くロンドンの住民たちもまた耳が肥えており、世界でも有数の音楽の都としてのロンドンの価値を高めているのです。日本では音楽や芝居は少々敷居と金額の高い芸術であり、ビジネス。何と羨ましいことかと思ってしまったら、もう筆者林望の術中にはまってしまっているですね。