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感想・書評『殺人犯はそこにいる・著者:清水潔』ネタバレ注意「北関東連続幼女誘拐事件。栃木県足利市と群馬県太田市を跨ぐ半径10キロメートル圏に於いて…」(レビュー)。 #読書


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殺人犯はそこにいる 著者:清水潔

文庫X。ネットで話題になったその題名の文庫は、盛岡市のとある本屋さんのフェアから始まった。一店員が、お手製の文庫カバーを作り、フェアの一角に平積みしたのだ。私自身、この売り出し方をしていないと、面白そうとすら思わなかっただろう。

さて、本の内容だが、みなさん、横山ゆかりちゃんをご存じだろうか。1996年7月7日午前10時半頃、群馬県太田市のパチンコ店から、当時4歳の女の子が行方をくらます。本来ならば、それが始まりだったと書きたいところだが、逆にそれが終わりだった。北関東連続幼女誘拐事件。栃木県足利市と群馬県太田市を跨ぐ半径10キロメートル圏に於いて、1979年から1996年に到るまでに起こった5件の幼女誘拐事件の最後の被害者と思われるのが、横山ゆかりちゃんだった。21年経つ今も、行方不明のまま、犯人も捕まっていない。この北関東連続幼女誘拐事件(以下、幼女誘拐事件)、と呼ばれるまでの軌跡。私はそこに一番衝撃を受けた。清水潔さんは一記者である。(以下、清水記者)清水記者の上司が一言、日本を変えるほどの番組を作ってみないか。そう持ち掛けられたところから、この物語は始まる。未解決事件を片っ端から並べ、清水記者は一つの事件に行き当たる。それが、足利事件だった。3人の幼女を誘拐し、殺害したという事件だが、不可解な点が多かった。調べていくうちに、浮かび上がる一つの疑惑。この事件は、冤罪なのではないか。清水記者は当時の関係者をあたった。被害者の両親、当時の捜査関係者、目撃者など。浮かび上がった疑惑は、調べていくにつれ、核心に変わっていく。警察の杜撰な捜査(いや、操作か。)・取り調べが浮き彫りになっていく。消えた目撃証言、保管状況の悪いDNA鑑定資料、拷問に近い取り調べ。警察は、容疑者には優しくない。ひと時、容疑者として任意同行に応じたが最期、そのまま刑務所行きだ。ほかにどんな証拠があっても、すべてもみ消されるし、どんな言葉も通じない。「私がやりました。」この一言を除いては。警察は正義ではない。マスコミに対して、平気で被害者・容疑者の印象操作を行うし、警察にとって不利な証拠はもみ消す。激しい憤りを感じた。清水記者のような記者が日本のマスコミ関係者の中に複数いれば、最悪の事態を免れた事例はあったのではないか。ペンは剣よりも強し。まさにその一言を実感させてくれる一冊だった。