「夜行観覧車」 湊かなえ・著 父親が被害者で、母親が加害者。残された子供たちは・・
高級収宅地のエリート家族の中で起きた殺人事件の話です。残された子供たちは、これからどうしていくのでしょうか。
日常に潜む怖さを描かせたら、とても上手な「湊かなえ」の作品は、もうすでに何作品も映画になったり、テレビドラマになったりしています。多くの人にとって共感する部分の多い、作品なのでしょう。
この本は、登場人物それぞれの視点から描かれていますので、語り手がくるくる代わっていきます。読み始めにはちょっと戸惑いますが、それぞれの登場人物の真の声で語られるので、そういう意味では分かりやすい本だと言えます。一つの家族の中で、殺人事件がおきます。近所の家では、家庭内暴力です。外国に行って帰ってこない息子を待つ母もいます。それぞれの家庭の、それぞれの問題が絡み合いながら、物語は進んでいきます。
題名の「夜行観覧車」は、これから作られるであろうという話で出てくるので、現実に存在するわけではありません。
それぞれの家庭の問題が解決した時には、「夜行観覧車」から見る風景のように、違った眺めが見えることになるのでしょう。