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感想・書評『ことばの魔術師西鶴 矢数俳諧再考:篠原進・中嶋隆』ネタバレ注意「小説を執筆する以前から俳諧を詠んでいたのです」(レビュー)。 #読書


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矢数俳諧とは何か?:『ことばの魔術師西鶴 矢数俳諧再考』(篠原進・中嶋隆)

井原西鶴と言えば『好色一代男』『世間胸算用』『日本永代蔵』といった小説類が有名です。しかし、井原西鶴は芭蕉と同じく俳人としての活動もしていました。しかも、小説を執筆する以前から俳諧を詠んでいたのです。西鶴がなぜ、小説と俳諧という全く異なるジャンルを同時にこなせたのか。この秘密に迫るのが『ことばの魔術師西鶴 矢数俳諧再考』です。

この本では西鶴が得意とした「矢数俳諧」に注目して、矢数俳諧の特徴・矢数俳諧と西鶴の小説との接点が丁寧に解き明かされていきます。創作数とスピードを競う矢数俳諧は時代の徒花でしたが、西鶴は矢数俳諧を詠むうちに小説への足がかりを掴んだとする考えには「なるほど」と思わされました。特に、アメリカで矢数俳諧が研究対象になっているとする論文には驚かされました。私達日本人はもっと日本の文化を知らなければいけません。一応、研究書の位置にある本書ですが、収められている論文は全て読みやすく、そして知的好奇心をかきたてられるものばかりです。安っぽいハウツー本が席巻する世の中で、本格的な文芸専門書に挑戦してみるのもいいと思います。