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感想・書評『犬物語 ジャック・ロンドン著・柴田元幸訳』ネタバレ注意「秀でた邦訳の名作フルコースです」(レビュー)。 #読書


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犬物語 ジャック・ロンドン著・柴田元幸訳・秀でた邦訳の名作フルコースです。

戌年に犬の話を読むのも悪くないですね。そう思ってタイトルを見て手に取ってみたら「柴田元幸翻訳叢書」となっている。氏は翻訳家としての読者を持つ数少ない一人です。

翻訳は、どのように訳すか以前に何を訳すか。まず、作品の目利きをすることが問われるのです。選ばれたのは、ジャック・ロンドンの諸作品です。この作家は19世紀末から20世紀初頭に活躍した。作品は書かれてから100年が経っています。収中の何作かは既に邦訳があります。本書は翻訳を含め、構成にも、新しさを出す工夫が見られます。犬の登場する短編が3作並べられ、次に邦題『荒野の呼び声』等で名高い作家の代表作が来る。付録は、犬の登場しない短編だ。まず、前菜を共し、舌を慣らしたところでおもむろに主菜を出し、最後にデザートという趣向らしい。前菜がいい味を出している。かつての飼い主と新しい飼い主のどちらと一緒に暮らすか葛藤する犬の話や、飼い主と激しい愛情劇を繰り広げる犬の話など、引き込まれていくうちに、主菜が『野生の呼び声』と題して差し出されれる。これは北米の裕福な飼い主の元で暮らした犬が、召使いに売り飛ばされ、北極と接する極寒の地で犬ぞりを引く過酷な生活の中で、野生に目覚めていくはなし。紀文はこなれていて、現代の作家によって最初から日本語で書かれた風合いです。本書はおそらく犬の名作リストの上位に上がる作品の一つです。