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感想・書評『水上悟志短編集:放浪世界』ネタバレ注意「目玉は本格的なSF短編である今回の目玉は「虚無をゆく」でしょう」(レビュー)。 #読書


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水上悟志短編集「放浪世界」 水上悟志 いつものコメディと共に2018年最高のSFをどうぞ

長期連載が終了したところの、久々の短編集です。いつもの乗りのコメディも良いですが、本書の目玉は本格的なSF短編である今回の目玉は「虚無をゆく」でしょう。

冒頭はごく一般的な団地の風景で始まり、実はそれが宇宙を旅する巨大ロボの中であり、主人公のユウ以外はすべてアンドロイドで、地球を襲った怪獣達の本拠地を目指しているもののその途中で既に地球は滅んでいるという、中々に怒濤の展開です。元々クローンによる世代交代を繰り返して目的地を目指していたものの、守るものもなく数世代前からは惰性で目指しているというどうしようもない状況ではあるもののそれでも欠けはしても折れずに進んでいくのには中々に痺れます。少年のユウも青年のユウもおっさんのユウもみんながかっこよかったです。そしてそれを支えたアンドロイド達もまた良いです。アンドロイドに心があるのか哲学的ゾンビに過ぎないのかという問いには、彼らが製作者に言った「心はあなたにあるんです」という言葉が答えになっているように思えます。すなわち、作られたもの達には作り手の思いが宿っており、それが心なのでは無いでしょうか。2018年早々に、今年最高の作品を読んでしまったかもしれません。