「仮面の君に告ぐ」 横関大・著
主人公の涌井和沙が病院のベッドで目を覚ますと、森千鶴という赤の他人になっていたというところから物語は始まります。自分は一年前に殺人事件の被害者となっていたことが明らかになり、ショックを受ける和沙。恋人だった慎介を心配しますが、彼は歯科医の仕事を辞め犯人への復讐に燃えていたのでした。
どうやら千鶴の肉体を借りられるのは10日間だけだという状況の中、葛藤しながらも必死に状況を好転させようとする和沙にすっかり感情移入させられました。始めは千鶴のことを不審がっていた慎介も、彼女の中に和沙がいるということに最後の二日間だけ気づくという展開も面白かったです。手を貸してくれる千鶴の弟の存在もよかったです。
和沙と慎介、それぞれの視点で描かれながらストーリーが進んでいき、最後に二人が永遠の別れを迎えた時には涙がにじみました。それなのに最後の最後で発覚する、和沙殺害の真犯人にはびっくりです。うーん、そんなオチはありか?と少々疑問が残りましたが、なんだかんだで一気読みしてしまった一冊でした。