ナカノ実験室

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感想・書評/娘たちのための狩りと釣りの手引き・女性が恋に仕事、社会へと向ける観察と洞察が、7つの短編から…ネタバレ注意。


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※こちらの記事は、在宅ワークで寄稿を募集した小説感想記事です。

メリッサ・バンクというNYC在住の女性作家による、ベストセラー連作集です。アメリカ版ブリジット・ジョーンズとも評される作品で、ジェーンという女性が恋に仕事、社会へと向ける観察と洞察が、7つの短編から織りなされています。特に評判なのが、28歳年上の男性アーチーとのストーリーで映画化もされています。邦題「恋の終わりの始め方」(日本未公開?)です。ジェーン役にサラ・ミシェル・ゲラー、そしてアーチーには、私のアレック・ボールドウィンが!大物編集者役なんて!まだ見てませんが悩殺必須でしょう。

 タイトルから「オトコ」をゲットするためのハウツー本?と勘違いされそうですが、なかなかどうして。硬派な文学本です。やはりアーチーとの齢の差恋愛が秀逸です。出版業界に身を置くふたりですので、会話が洗練されてます。しゃれてる!

 中年の魅力に惹かれるヒロインの心情が、28歳という年齢差にも関わらず自然な成り行きとして読者に伝わります。いや、若く聡明なヒロインだからこそ、そこらの同年代よりはるかに頼れる才能ある中年男性に参ってしまうのでしょう。けれど、アーチーは中年から老齢へと差し掛かる微妙なお年頃。 それにジェーンは”suburban girl” (郊外の女の子)である”いいとこ”のお嬢ですので、周囲や家族は本気で心配し、ふたりの別れを切実に望みます。特にジェーンのお父さん。この人がまた知的で素敵。思うに現代アメリカ人の知的層の素敵さ・洗練さを実感かつ堪能できる作品かもしれませんね。ハリウッドがそれらを描けば妙に誇張されたり、不自然だったりしてしまうのですが、この作品ではスムーズに描かれていると思います。

 ラストでアーチーが「僕の可愛いアカゲザル」とジェーンを抱きしめるシーンなんて、詩的な美しさすら漂います。

 英語版も読んでいますが、どちらも無駄のない洗練された文体。飛田野裕子さんの翻訳も最高です。