寄稿を頂きました。
「ゼア ウィル ビー ブラッド」をみて、「世の中の企業戦士は、実はみんなこうなんじゃないのか!?」と思った
はっきり言って、始終暗い映画です。邦題用のタイトルもありません。出てくる人はほとんど男性。だけど、クライマックスまで釘付けで観てしまうんです。物語は開拓時代のアメリカ。石油採掘に情熱をかける孤独な山師が主人公です。果てなき荒野に仲間とのりこみ、ただひたすら穴を掘っては油田の在処を見つけるところから物語は始まります。当然、危険と隣り合わせの仕事。案の定、油田を掘り当てたところで爆発がおこり、仲間はあっさり死んでしまいます。そこに取り残された仲間の息子。山師は彼を勝手に自分の養子にし、油田を追いかけ、一緒に旅をするのです。
途中、再び事故で息子が失明し、育てることが困難と思った山師は彼を寄宿舎に預けてしまったり、開拓に必要な土地が欲しいがためにその土地の牧師に改宗を誓ったり、と油田のためとはいえ、人道に欠けた行動を次々と行っていきます。そして遂に、石油王となり巨万の富を得た山師。しかし、同時に残ったものと言えば、人を疑って止まない心と孤独な人生のみ…。
主人公を演じるのはダニエル・デイ・ルイス。この映画でアカデミー賞主演男優賞をとっています。昨年上映された「リンカーン」でもとっていますね。アメリカを象徴するような人物を演じきっていますが、イギリス人です。また、不穏な音楽で暗い物語をさらに暗く盛り上げるのは、英国バンド・レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド。彼は「ノルウェイの森」の音楽も担当しています。
自分の利益のためにすべてを犠牲にする、という心理状況がシーンの端々から伝わる作品。時代を問わず、出世を目指す企業戦士は「わかるわかる」と実感するんじゃないでしょうか。