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秘密(東野圭吾著)感想・書評&あらすじ・本来の肉体とは別の肉体に魂が宿ってしまう。SF小説にありがちな…ネタバレ注意。


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寄稿を頂きました。

秘密 (東野圭吾 著)

本来の肉体とは別の肉体に魂が宿ってしまう。SF小説にありがちなシチュエーションで、この物語は始まった。
主人公の男性はバス事故で妻を亡くし、同乗していた小学六年生の娘も植物状態は免れないと宣告されてしまう。その娘が奇跡的に意識を取り戻した。しかし、目を覚ました娘の中身は、妻・直子だった。こんな話、誰も信じてくれるはずがない。世間に知れたら、共に生活することさえできなくなるかもしれない。

二人は、自分たちに起こったことを「秘密」にし暮らしていくことを決める。娘の姿をした直子は、外では娘であり、家では妻であった。しかし、愛する妻でありながら自分の娘として接し生きていかねばならぬ主人公の苦しみは、日ごとに増していく。それはまた、直子にとっても同じであった。二人は自分の苦しみを相手に訴えることもでないまま生活を続ける。ここにもまた、各々の抱える「秘密」が存在する。直子の肉体が十六歳に成長した時、ついに主人公は、彼女に対して娘の父としての態度を貫くことを決める。その直後から、娘の肉体に時折本物の娘・藻奈美の意識が現れるようになった。ついに直子の魂は消え、心身ともに藻奈美が戻ってきた。
この物語には実に多くの「秘密」が描かれている。その描写はすばらしいものの、話の展開自体はありきたりだと感じていた。しかし、ラスト数頁で自分の感覚が全くの的外れであったことを思い知った。この小説に込められた本当の「秘密」の意味を知った時、確かに軽い身震いがした。
人は何のために「秘密」を持つのか。誰のために「秘密」を守り続けるのか。
誰もが一つは抱えている「秘密」という視点から人間の感情と愛を描いた傑作である。