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感想・書評:炎立つ(高橋克彦)あらすじ・東北のルーツに魅せられる、初の征夷大将軍である坂上田村麻呂は、朝廷の命を受け…ネタバレ注意。


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寄稿頂きました。

炎立つ・高橋克彦 東北のルーツに魅せられる

歴史というものは実に面白い。視点の角度をちょっと変えて見ると、それまでの正否がまったくもって逆転してしまったりするのですから。
中学生の頃、歴史の授業で教わったこと。初の征夷大将軍である坂上田村麻呂は、朝廷の命を受け、陸奥(東北)に蝦夷征伐に向かい、見事これを撃滅。先生の教えることに間違いはない、と信じ切っていた頃だけに、この出来事は朝廷側の勧善懲悪と捉えていました。

ところが、大人になって「炎立つ」を読んでみると、授業で習ったことがとんでもない間違であったことに気づくこととなりました。
平安期、東北の住人達は、俘囚、蝦夷(えみし)と蔑まれ、一種の差別的扱いを受けていました。しかし、金や絹など物資が豊富な土地であったが故、当時の中央政府である朝廷は、陸奥守を置き、これらを支配下に置いていました。争いを良しとしない陸奥側は臥薪嘗胆、只管従順の姿勢を貫いていました。が、このバランスが崩れ、前九年の役、後三年の役へと、燻っていた火種が一気に爆発・・・
安倍氏の滅亡から、京の都を凌ぐとまで云われた藤原氏三代の栄華、そして、崩落まで。神々の集う国、奥州の繁栄と滅亡、東北地方の奥深い歴史がダイナミックに描かれた秀作です。平家物語の一節にあるような諸行無常の感がたっぷりと堪能でき、ドラマチックな人々の生涯に涙することも。ミステリー作家、高橋克彦氏の独特な歴史観を楽しめる大作。お勧めです。