寄稿頂きました。
邂逅の森(カイコウノモリ) 熊谷達也著
この本は、東北のマタギの主人公の一生を描いた作品です。マタギの世界って聞きなれない…、しかも現代ではなく少し昔の話…とのことで、読み始める前は完読できるか自信がありませんでした。しかし読み始めてから分かりましたが、初心者でも難なく入り込める文章表現力に驚きました。
訛りや独特のマタギ用語を使っているにもかかわらず、すんなりと入り込める世界観。普段知りえないマタギの生活は新鮮味があり、さらに物語が進むにつれて現代に生きる私たちへのメッセージも感じられてきます。自然と人間が共存するにはどうしたらいいのか、社会問題でもある自然破壊もここから深く考えさせられます。時に残酷な自然をまじまじと表現してあり、最後は衝撃で心に残るラストであったのも印象深いです。
仕事で何かに特化しておられる人はどの分野でも一目置けますが、この小説に出てくるマタギたちの生き方に、食べていくには、また生きていくにはどうすればいいか、という根本的な問題を考えさせられました。