寄稿頂きました。
テロリストのパラソル (角川文庫): 藤原 伊織著 暇つぶしにはもったいないレベルの小説!
この小説を読み始めてまず驚くのが、、主人公がなんと中年のホームレスだということです。サスペンスの犯人を捕まえる役とは、元来デキる警察官であったり、探偵であったりするものですが(私のイメージです)、このホームレスは冒頭から日中ウィスキーを飲みながらフラフラしています。
大丈夫かコイツ、と思いながらも読み進めていくと、意外に、いや想像以上にカッコイイのです。独自の情報網を使い、文字通り”ただのホームレス”がテロリストを捕まえるため奔走します。普段知りえなかったホームレス界のルールや、ホームレス目線での社会の見え方が描かれています。例えば、ホームレスで路上生活をし始めた人が一番最初に怯えるものが、路上を行きかう人の足音、だそうですよ。その無関心さに絶望するのだそうです。
ちょっと暗いことを書いてしまいましたが、話のテンポもよく量も、ちょっとした時間に読むのにはうってつけです。暇つぶしにはもったいない娯楽小説だと思います。