感想
元軍人の琉・F・和彦は紘将軍という老婆から魔法を使うことができる少女スウを妖精遊園地(フェアリーパーク)まで送り届けるように頼まれるところから物語は始まります。過去を描いていると思われるのですが、大量の伏線やこの作者らしい言い回しのせいでとっても難しい作品のように感じました。
しかも、スウは「そのままずっとひとりぼっちで生きていくよりもたった1つの小さな望みを叶えて幸せになりたい」と望んで、その願いを叶えたあと壊れていく遊園地にひとりぼっちで残り、死んでいきます。とっても線の細く美しい、ファンタジックでまるで「不思議の国のアリス」の世界のような不思議さにうっとりとしてしまいます。この不思議で理解できないような感じは恐ろしいと思うのに、なぜか惹かれてしまうのはやっぱり、人間という生き物が儚いものに惹かれる生き物だからでしょうか。
芯の強く、ハッとさせられるようなことを言っているのにこんなにもスウという少女が儚げに見えるのは何か夢見がちな表情をしているからでしょうか。和彦という人物は「ツバサ」でサクラの父親という役で出ていたと思うのですがこんなに切ない話をもつ男だとは思いませんでした。目を閉じて歌う女性の姿や崩壊していくたくさんのものが出てくるとなんだかとっても悲しいような気持ちになります。良い意味で、万人受けする作品ではないだろうなと思います。