感想
妊娠中にこの作品を読むのではなかったと思うくらい切ない気持ちになりました。近日、ドラマが放映されることもあって今注目の作品だと思います。主人公は二カ月の赤ん坊の新米ママ、サヤ。毎日毎日育児書にまみれて戦争のような日々を送りつつも健やかに育つ息子ユウスケと、夫のユウタロウと幸せな日々を送っていました。
しかし、スーパーに親子3人で買い物に行った帰り道、青信号の横断歩道にブレーキとアクセルを踏み間違えた初心者マークの女子大生にはねられ、即死してしまいます。このユウタロウの葬式のシーンは彼目線なのですが、死んだ彼が思ったことに「あの時前を歩いているのがサヤじゃなくてよかった」なのです。
跡取りとして息子をひきとりたいとやってきた義姉に危機感を覚えたサヤは伯母の遺した家に人知れず移り住むことになる、というストーリーです。一番印象に残っているのは、引越し当日、電気会社などの連絡が遅れてしまい紹介された旅館に一泊することになるのですが、そこの女将のセリフです。
湯ざましを与えるサヤですがユウスケはあまり飲んでくれず、代わりに薄めたお茶を飲ませるとがぶがぶと飲み始めるのです。「こんなに小さくてもあたしらと同じさ」と。あと「ユキノシタとキャベツ」の話も参考になりました。私の夫が死んでしまったらと考えるとなんだか読みにくいと思ってしまうけど、瑞々しくて素敵な作品でした。