道尾秀介「カラスの親指 by rule of CROW's thumb」
カラスの親指は、背の目などに代表されるホラーテイスト満載の道尾作品の中では異彩を放った作品です。心霊現象などは一切出てきません。むしろかなり現実的な作品です。内容は詐欺で生計を立てている冴えない中年男性二人組みが、ひょんなことから未成年の少女と暮らすことになったことから、色々展開されていきます。
探偵や刑事、殺人事件がでてくるわけではないのに、どうなるどうなる?と正に先が気になるミステリ調で、私のミステリ好き魂を満足させてくれました。実は、主人公である中年詐欺師をはじめ、一緒に暮らし始める面々には暗い過去があるのですが、それがあまり重たくなく、さらりとした調子で書かれているのも読みやすくて良かったです。しかも、文体からわかっていてもついミスリードされてしまうので、想像と違った展開になると驚きの連発でした。最後物語にさりげなく散りばめられていた伏線が明らかになるのですが、こういうオチだったか~と納得しました。ちょっぴりしんみり、でもほっこりの本で読み応えがありました。