「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦・著
森見登美彦さんの作品を読んだのは、これが初めてです。アニメ映画化のニュースで知り、山本周五郎賞受賞作だということで興味を持ち手に取ってみました。
ジャンルはファンタジーの恋愛ものと位置付ければいいのでしょうか。読み始めは独特な文体に面くらいましたが、個人的にはとても好きな言い回しでした。現代ではあまり使われなくなった古き良き日本語を多用しており、まるで言葉遊びを楽しんでいるかのような文章にすごくワクワクさせられます。なのに堅苦しさは全く無く、軽やかでポップでライトノベル的とも言える、これまでに出会ったことのない世界観でした。
「黒髪の乙女」に恋する主人公の「先輩」ですが、体を張りまくって彼女へ近づこうとするものの次から次へと珍事件に巻き込まれ、間違った方向へ全力疾走し続ける様が笑えます。次第に哀れな先輩を応援する気持ちになって読み進め、ラストの展開には思わず拍手したくなりました。緻密に構成され考え抜かれたオチが素晴らしかったです。奇想奇天烈な内容ですが、こんな小説もあるんだなぁと新たな読書体験ができて、とても幸せな気分になれました。