「ぼくの死体をよろしくたのむ」 川上弘美・著
「センセイの鞄」や「蛇を踏む」などを読んで一時期川上弘美さんにハマっていたのですが、ここ10年ほど疎遠になっていました。久々に新刊を見つけ、気になって手に取ってみた一冊です。
18作からなる短編集で、一つが短いのでちょっとした時間を使って楽しむことができました。
ファンタジーと言っていいのか、ひとつのジャンルではくくれない川上ワールドが広がっていて、予想以上に面白かったです。奇想天外な話が多いのですが、直前に村上春樹さんの作品を読んでいて、物語におけるリアリティについて考えていたところだったのも幸いして、すんなり入り込めて一気読みしてしまいました。
「大聖堂」、「憎い二人」では、時にたまらなく煩わしく面倒くさい友情というものについて考えさせられ、「なくしたものは」、「土曜日には映画を見に」では、女同士の友だち関係の難しさに思いを馳せました。私たちが日々の生活の中で引っかかっていること、でも上手く言葉にできないようなことをすくい上げたような内容ばかりで、とても胸に沁みる素敵な作品でした。