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感想・書評『帚木蓬生の守教』ネタバレ注意「日本に伝わったキリスト教の受難時代を村の大庄屋を中心に描いた本だったのです」(レビュー)。 #読書


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帚木蓬生の「守教」上下巻を読んで思ったこと

久しぶりに幅記載の新刊が出たので読んでみました。
この作家の方は上下巻の2巻組が多いので長編小説スッキリの私には合っています。

大抵の作品は読み終えましたが、今回のこの本は特に宗教に関心がある私には非常に興味深く、特に日本に伝わったキリスト教の受難時代を村の大庄屋を中心に描いた本だったのです。

そして子孫に伝え残すために想像を絶する苦しみを乗り越えた市井の人々の信仰の厚さを描いた本です。

キリスト教を伝えてきた人々に苦しみや悲しみそして教えを保つことの難しさと大切さ思い知らされました。
また当時の日本は鎖国をしていたのですが、日本からマカオあたりに追放になっ宣教師達や日本人の伝道師たちが、再度日本にあるで自由に入国している事実が書かれています 。

当時は長崎の出島を中心として海外との交易を開いていた我が日本は、オランダやポルトガルまたは当時の中国との交易が認められていたので、そのルートを使えば自由に入国ができたようです。


実はこのことが私には不思議な感覚を覚えました。
なぜならジョン万次郎をはじめとする、当時、嵐に遭遇し難破して鳥島に漂着した漁民の多くは太平洋を渡りアメリカに到着しています。
もちろんこれは当時のアメリカの捕鯨船に助けられた結果なのですが、彼らの多くは日本に再び帰ってくるのはできませんでした。
でもこの「守教」を読んでみるとマカオあたりに追放された、何人もの宣教師たちが再度日本に入国し(密入国)東北地方にあたり現地で布教活動をしていた事実があります。

多分この結果は隠れキリシタンである日本人たちがポルトガル人やオランダ人である宣教師をかくまった結果だとは思いますが、反面自分の意思にかかわりなく嵐によって何日もの間漂流しそしてその結果捕鯨船に助けられた、日本人の漁船員たちのその後の運命を見ると違和感を感じます。

本題から離れましたが 日本史で習ったキリシタン弾圧や、天草四郎時貞による島原の乱 の事実からは、大変かけ離れたキリスト教信者たちの素晴らしい生き様が書かれており大変感動を受けました。

宗教というものの、信仰の強さ信念の強さというものを改めて知ることができました。
目をそむけたくなるような拷問に遭いながらも、決して棄教しなかった人々の殉教の様子が生々しく描かれています。

この本の最後の方はどんどんと時間が早く進み、江戸時代が終わり明治時代になってようやく宗教の自由が認められるところまで物語は進んでおりますが、フランシスコザビエルがあー君に選挙を指定して入国以来250年いや300年近い時間の流れが、すなわちキリスト教受難の時代でもあったのです。
そして思うのですが豊臣秀吉がキリスト教弾圧に乗り出さなければ、現在の日本はどのようになっていたのであろうかと思います。
果たして、そのような変化した日本の物語、誰か書いてくれないでしょうか?