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感想・書評:憑神(浅田次郎)あらすじ・舞台は幕末、貧乏旗本の次男坊に生まれた主人公の別所彦四郎…ネタバレ注意。


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寄稿頂きました。

神様にもいろいろいるものです。憑神・浅田次郎

神様というと、そのイメージは、畏れ多きもの、人々の所願を成就していただける有難い存在というのが通念でありますが、よくよく考えてみると「神」と名のつく存在はそれだけに限りません。貧乏神、疫病神、死神も神様の内。もし間違ってそれら三つの神様にお願いごとをしてしまったら・・・
舞台は幕末。貧乏旗本の次男坊に生まれた主人公の別所彦四郎。文武に秀でて周囲からも一目置かれる人物なのですが、何せ時は二百数十年続いた太平の世。

その能力を発揮する場もなく悶々とした日々を過ごしておりました。ところが、ふとしたことから、拝んではいけない三つの神様に祈ってしまったことからテンヤワンヤの事態に陥ります。最初の貧乏神と疫病神は何とかクリアするのですが、死神だけはどうにもならない。そんな折、主である幕府が崩壊の危機、いわゆる戊辰戦争の勃発です。聡明な別所彦四郎は、この時新しい時代の到来を予見しますが、新時代に身を委ねることなく、幕臣としての道を選ぶことに。
妙に人間臭い下っ端神様たちの姿には、笑いと哀愁の要素がふんだんに入交り、一人の人間として、死ぬことへの恐れと、武士として誇りをもって死するべきか、との間で葛藤する彦四郎の姿には共感の念を禁じ得ません。そして、最初で最後の彼の晴れ舞台。哀しみの中にも晴れ晴れとした爽やかさが感じられ、笑いながら読んでいた最後を、ギュッと感動で包み込んでくれます。後腐れのない清々しさ。浅田次郎作品の流石なところです。