面白いところ。
孤独の中で切望するあまり、聞こえないはずの声が聞こえて見知らぬ誰かと繋がったなら—。現実に起こりえない、と思う事が現実であるかのように引き込まれていく。携帯と情報過多の今だからこそ、
堪え難い孤独があり、主人公・相原リョウへの理解が進む。そう、自分もこんな風にして架空の携帯電話から聞こえるはずもない声を待っているのかもしれないと。
物語は伏線を帯びて最終的には現代と過去と未来がひとつながりになってしまう。
声から始まる繋がりや恋心ってあるんだろうか?そんなに不器用で不憫で純粋な恋もあるのだろうか?その恋は、叶うのだろうか。
自問しながら相原リョウに感情移入していく。架空の携帯で繋がる野崎シンヤとの恋の結末は、想像するよりずっと意外で悲しい。
運命とか定めとか知っていても覆ることが出来ないのを理不尽に悲しむ。
救いは、原田という謎の女性が実は・・という意外な正体が、この物語の癒された結末であろうか。
作者に関して。
乙一の読切り編は他も「傷」「失踪HOLIDAY」にも見られるような闇を抱えた人間の生々しさが魅力である。登場人物は己と表裏一体に感情移入出来るという魅力があり、乙一の原作や小説全てを網羅して読破するという醍醐味へ駆り立てられる。
- 「きみしか聞こえない・読切」
- 原作 乙一
- 漫画 清原 鉱