萩原浩『金魚姫』ある日屋台ですくった金魚にはとんでもない秘密があった。
特になんの前情報もなく、なんとなくタイトルと表紙に惹かれて手にとった作品です。職場のパワハラで自殺寸前まで追い込まれていた主人公の僕は、ある日ふらりと立ち寄った近所の屋台で泳ぐ一匹の美しい金魚に惹かれて連れて帰るのですが、実はそれは金魚に姿を変えたお姫様。その日以来、なぜか見えないはずの世界が見え、仕事がうまくいき、日常は不思議なことばかり。
金魚になったり、人間になったり、不思議な彼女との共同生活が始まります。彼女はどうして僕の前に現れたのか。どうして金魚になったのか。どうして数百年も生き続けているのか…。記憶のない彼女と共に探っていくうち見えてきたのは、彼女のあまりに切なく悲しい過去でした。
物語の筋の面白さはもちろんのこと、携帯電話やカフェなど、現代人の日常生活に興味津々の彼女の言動はいつもどこかズレていて、そんな彼女に僕が振り回される様子がとてもほほえましいです。文章も凝りすぎていなくて読みやすく、一気に読みきってしまいました。他の作品も気になります。