ナカノ実験室

ナカノ実験室が行う実験的なブログです。

スポンサーリンク

感想・書評・復活を使命にした経営者  岡田 晴彦 社長の真摯な姿勢に感動しました。ネタバレ注意(レビュー)。 #読書


【おすすめ情報】知らない人は損している!「アマゾン業務用ストア」で便利でお安く。

2013年発行と、少し古い本ではあるのですが、手にとる機会があり読みました。私は営業職なので、本作で描かれる営業出身の芳井順一社長(当時)が経営改革で奮闘される姿に非常に共感を持って読み進めることができました。本作は誰もが知る漢方薬メーカーのツムラの復活と再生の物語です。

そもそも私はツムラがバブル崩壊時に倒産の危機にあったことを知りませんでした。今では当たり前のように病院で処方されている漢方薬ですが、当時は薬効が科学的に証明されていない経験値のみの薬であったとのこと。

それを製薬メーカー営業出身の芳井氏が社内を説得し、牽引し、医学界で漢方が当たり前のように使われる社会を目指して奮闘する姿が描かれています。そこにあるのはお客様目線の重要さと、徹底して自分たちの強みを活かす方向性です。

私も知らなかったのですが、実は漢方とは中国のものではなく、日本で体系化された医薬なのです、大陸から渡ってきたのはあくまで原料としての生薬であり、薬効は国内で漢方医によって長年の経験に基づき整理されてきたものなのです。それが明治維新期に蘭方が正式医学に認定されてから民間療法的な扱いになり、「効果はあるが、薬効が科学的に証明されていない」健康食品的な位置づけになっていたのでした。漢方を処方するのは「昔ながらの年配の医師だけ」という状況から芳井氏の挑戦は始まります。

彼は西洋薬メーカー出身の視点で漢方を見つめ直し、「処方するのは西洋薬に慣れた医師なのだから、彼らに受け入れられる形で漢方を訴求しない限り普及しない」と社内改革に取り組み始めます。それはある意味で今までのツムラのやり方を否定するものでもありました。

しかし短期間のうちに建て直さなければツムラは倒産してしまう状況にあり、芳井氏のギリギリの戦いが始まるのです。本作は単なる経営書というだけでなく、読み物としても非常に面白いものでした。芳井氏がとった方針は「こうすれば状況を打開できる」という完全な正攻法です。しかしそれはあまりにもハードルが高い茨の道でもありました。その道を信念を持って部下を率い、突き進んでいった芳井氏の勇気とリーダーシップには感嘆させられながら一気に読んでしまいました。全てのビジネスマンに手にとっていただきたい良書です。