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私の男[桜庭一樹:感想・書評]ライトノベルタッチの印象があったため直木賞受賞というのは意外な気持ち…ネタバレ注意。


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※こちらの記事は、在宅ワークで寄稿を募集した小説感想記事です。

 本作は第138回直木賞を受賞しており、タイトルが気になったために読み始めました。桜庭先生の本は以前にも読んだことがあるのですが、ライトノベルタッチの印象があったため直木賞受賞というのは意外な気持ちでした。

 読み始めた当初から「あ、これ好きなやつだな」と思ってしまいました。私の男=主人公・花の養父と いう、安っぽいといえば安っぽい設定なのですが、桜庭先生の少し軽い文章のタッチが花の拙さやもどかしさとマッチして、更に花と同世代の私も感情移入しやすくなっていて、読み終わるのが勿体なくて少しずつ少しずつ読みました。

 一章ずつ物語中の登場人物視点に切り替わるんですが、まあどいつもこいつもクセがあり、全員まるで「自分が正常で周囲のやつが変」的な態度を疑いなくとってきまるが全員変です。なのに全員、感情移入出来る部分があり、全員嫌いになれない。

 その先には絶望しか見えない花と養父との関係が甘くグロテスクなものに見え、「こいつら変」って気持ちは浮かんでも「こいつら気持ち悪っ!」という嫌悪感は生まれない。「こいつら本当に自己中だな」と思いつつ、いつの間にか私は花になっていて、お父さん以外の人には興味を持てない暗く熱い人形になっている。これを読むと、全身何もかも全て任せられる年上の男性が欲しくなってしまう。

 そしてこの小説に思い入れを持っているのは、結婚してすぐの時に読んだこともあって、花の結婚式の場面で鼻水ダラダラ垂らして号泣してしまったから。この本と出会ったタイミングがすごく良かったんだと思う。だから最初から最後まで、花に自分を重ねて読んでいけたのだと思う。