※こちらの記事は、在宅ワークで寄稿を募集した小説感想記事です。
『暗黒童話』乙一
『暗黒童話』は、乙一の作品の中でも一番好きな小説です。
内容は、移植手術した主人公が、移植した眼から事件に巻き込まれていくという、どこかにありそうな設定です。
しかし読み進めていくうちに、“ありきたりの話”ではないと気付かされます。
いい意味で期待を裏切り続ける展開に、胸がドキドキします。
特にラストに近づくにつれ、映画やドラマのような映像作品でもないのに感じる疾走感がたまらない一冊です。
話の途中ではさみこまれた、犯人を一人称にして書かれた心理が胸をつきます。
もちろん犯罪者の心理なのでもっと暗くて理解しがたいものであってもいいのに、何故か読んでいて切なくなります。
それは同情にも似た感覚で、“何が本当に悪いことなのか?”ということさえも分からなくなってしまいます。
そして物語の合間に、小説のタイトルと同名の童話が度々書かれています。
その童話自体も切なく、胸を締め付けられます。
犯人の正体も全く予想もしていなかった登場人物で、『騙された!』と思うことは間違いありません。
サスペンス好きには是非読んで頂きたい一冊です。