メタファー思考は科学の母。大嶋仁 薯。
著者は、科学技術を重視するあまり文学を無用という風潮を、深刻な無知と時代遅れだと警鐘を鳴らしてます。なぜならすべての思考の基礎はメタファー(隠喩)的、つまり文学的思考であるから、自然科学の健全な発達のためにも文学は必要だと強調しています。
人間の脳は、言語の習慣以前からメタファー思考をしており、これなしには論理も理知も発達しないです。メタファーは、文学の核であり、文学の中心は歌と物語だ。「花のいろはうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」と、小野小町が詠み込んだ花は、青春のメタファーだ。メタファーを用い、歌として感情表現することで、人間は他者と結び付きます。著書はまた「物語は生のメタファー」と言ってますね。脳科学によれば、人間精神の核である記憶は、経験の物語化なしに成立しないです。人間の認知それ自体、物語論理の構築力による文学的なものだ。さらに著者は、「文学は古傷をいやす」としています。文学軽視という病理の模索さを知らされる一冊の本です。