山崎豊子のドロドロとした人間の欲望が渦巻くドラマです。勤労者音楽で成功しようとする主人公とその周りで甘い蜜を吸おうとする人々のお話ですが、人間の建前という仮面を取ったらこんなにもハラハラするのかと音楽の物語と思えないほどの大人の世界です。
本当に純粋で単純に音楽が好きだからとか、そんな理由ではやっていけない社会の闇さえも感じさせます。次々と困難が降りかかってくるのですが、その度にサスペンス物を読んでいるような緊張感に襲われます。
取材の女王である山崎豊子さんの作品だけあって奥の奥まで作りこまれた世界はついつい引き込まれてしまいます。巧妙に政治の世界も絡み合い、愛憎劇を見せてくれるのですが、豊子作品らしく、良い人はコテンパンにやられますね。常にハラハラしながら読みました。音楽のチョイスも妙に気になるものばかりなのでオススメは本に出てくる曲を聴きながらの読書です。入り込みすぎてぬけだせなくなるのでか、注意して読んでください。