映画化もされたミステリーの傑作『クリーピー』の主人公、高倉教授がさまざまな事件を解決してゆく短編集が本作です。私はクリーピーシリーズの高倉教授の大ファンです。
というのも、作者の前川裕さんご自身が大学教授をしていらしたという経歴から、高倉教授のキャラがすごく自然に描かれていて、あたかも実在する人物のように感じられるからです。冷静沈着で常に学術的見地から物を見る高倉教授の存在があるからこそ、血生臭い猟奇的な事件を描いているにもかかわらず、理性の残る知的でスタイリッシュな仕上がりの作品となっています。本作では特に、高倉の妻である康子の高校時代の彼が現れ事件を巻き起こす一編が切ない恋愛物としても読め、高倉教授の男性として、夫としての違った魅力も最大限に引き出された読みごたえのある物語となっています。読み込むほど魅力が増してくるキャラだと思うので、ぜひ前作の『クリーピー』次作の『クリーピー・スクリーチ』と合わせて読むことをオススメします。ミステリーとして存分に楽しめ、知的な読書を楽しめる作品です。