今年の本屋大賞受賞作ということで手にとってみました。ある事件から不登校になった中学生のこころがオオカミ様に鏡の中にある城に誘い込まれて、そこで他の中学生と出会って関わりを持っていくというストーリーです。
辻村さんの作品は読者層が比較的若いイメージがあってなかなか読む機会がなかったのですが、素晴らしく力のある作家さんだと思いました。中学生主人公に合わせたやや幼い文体ながらも主人公の感じている心の揺れが実にリアル。言語化しにくいようなモヤモヤした気持ちを的確に文章に表現していました。私自身も中学生時代に不登校の経験があるのですが、当時の自分を重ね合わせて心が締め付けられるような思いをしながら読みすすめました。
出会った中学生との関わりを通じての成長譚かと思って読み進めていくと、ミステリー要素も絡んできてエンターテイメント性も高まっていきます。伏線がきちんと散りばめられているのに案外気づかないものですね。
結末は希望のある明るいもので、「みんながんばれ!」とエールを送りたくなりました。