人気作家である柳さんがまさかこんなに逼迫した状態にあったことにまず驚きました。考えていた貧乏とはレベルが違いました。家にある物を売りに行く電車賃さえない、たべるものが猫のエサしかないなんてシーンも十分にショッキングなのですが。
迫りくる締め切りに間に合わず病んでゆく精神状態。仕事ができないことでより苦しくなってゆく生活。そして複雑な家族関係。もうそこに書かれた一文を読むごとに苦しくなってゆきます。でもそこはさすが。文章に力があるので読みはじめたら最後、どんなに苦しくても読むのを止められません。柳さんの本は他の本もすべてそうでした。命を削って書いているという表現がぴったりくるんです。最近イヤミスという言葉がありますが、彼女の書く文章はまさに生きたイヤミスです。本作もイヤな汗をたっぷりかきながら読みました。それ以上に柳さんがイヤな汗をたっぷりかきながら本作を仕上げる姿が目に浮かびました。今は落ち着いて暮らしてらっしゃる旨の記事をネットで読みました。ご苦労された分幸せであってほしいと思います。