近年熱く燃える広島東洋カープ。この本で軸になっているのが、1975年の『奇跡』のリーグ初優勝と、ペナントレース中の『軌跡』です。そこに中学生男子3人が巡り逢った人生の『奇跡』と、友情の『軌跡』がからめられていく展開に、その時代に自分も一緒に生きているように思えました。
実在の選手たちの調子や戦跡などが、とにかくリアル。山本浩二選手のホームランに興奮したり、沈黙するバットにイライラしたり。『カープ女子』でなくとも、自然に肩入れしてしまい、登場する根っからのカープファンの男子2人の熱血ぶりに同調。転校してきて巡り逢ったもうひとりの男子は、戦争や原爆が影響した街の歴史を学びながら、友情を育み、心をひとつにしていく姿が健気で賢くて思いやりにあふれています。この時代に『ひとつ』になったのは、小さな友情だけでなく、カープと広島市民も同じ。自分自身も、広島やカープや男子たちと『ひとつ』になって、泣いたり笑ったりできるのです。描かれているのは、たった1年の出来事。でも、熱くて暑くて厚いです。広島カープも、男子たちも、まさしく『輝石』だと思えるストーリーです!
