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感想・書評・オルダス・ハクスリー「すばらしい新世界」はゆるやかなディストピア・ネタバレ注意「」(レビュー)。 #読書


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最近、今読むべき本として、SF小説「1984年」が紹介されるのを目にします。これは1940年代に書かれた、全体主義の監視社会を描いたディストピア小説ですが、それよりも10年ほど前に書かれたのが、この「すばらしい新世界」です。
作者は「1984年」の作者と同じイギリス人で、イギリスらしい皮肉が効いた諧謔的な語りが楽しいSF小説です。
人間が生まれるところから死ぬまでを徹底に管理されているのですが、今のような自然妊娠や家族という形態を廃止するこもで、幼少からのものの価値観に対する教育がしっかりなされるので、上手い具合に国が管理しやすい人間に育ち、従順な労働力として社会を形成しています。
管理されるとか、家族が廃止と聞くと身構えますか、この様子は、正直なところうらやましいです。
人々は徹底した教育により、消費と娯楽と合法ドラッグで毎日苦痛や葛藤がなく楽しく暮らしているのです。苦痛や葛藤がないため、当然不満をもたず反乱を起こさないというわけです。本来なら、人間性や考える頭が消え失せていることを問題視するべき一冊であり、当然そうした問題提起が狙いなのですが、疲れた現代人には本当に「すばらしい新世界」に思えます。
しかし、今現在も、疲弊して日々をこなすだけの毎日なので、徐々にこのディストピア世界に移行しつつあるのかもしれない、と危機感も抱かせる一冊です。